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2024年9月3日更新

  

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卒業生に、本校での探究活動がその後の大学生活や自分の進路にどのような影響を与えたかなどを聞きました。

 

2021年度卒業(2024年4月インタビュー)
お茶の水女子大学 生活科学部人間・環境科学科 白武璃子さん
慶應義塾大学 文学部人文社会学科英米文学専攻 田口結万さん

Q1. 大学ではどのような活動をされていますか? 

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白武:お茶の水女子大学の生活科学部人間・環境科学科に所属しています。建築や人間工学など様々な分野が学べるのですが、中でも、人々の生活や命に関わってくる土木工学を究めて行きたいと考えています。高校生の頃、墨田川を見ていて、船が通るたびに黒いヘドロが巻き上がるのに気づきました。このヘドロを何とかするにはどうすればよいか考えていたのが私の原点です。それがきっかけで、大学に入学してからは、発展途上国の水質調査と浄化について研究・実践している先生にお世話になっています。

今年の10月からは、環境先進国と言われるドイツのケルンに留学予定です。環境問題解決のヒントや水処理について学んでいきたいと思っています。

田口:慶應大学文学部で元々日本文学を専攻する予定でしたが、英米文学を専攻し、文学作品の分析をしています。専攻ではイギリス文学とアメリカ文学、英語史や言語学などを学びますが、それぞれの分野で共通していることもあり、各分野の学問は広い意味で繋がっているんだなと面白さを実感できます。英語に興味が移っていったのは、大学一年次の英語の授業で翻訳に取り組んだことがきっかけです。去年の夏にイギリスに短期留学に行って、英国の文化に魅了されたのも一つの理由ですね。

勉強してみて、やっぱり日本語を深く理解していなければ英語を理解して表現することも難しいということに気づきました。英語教育にも興味が湧いてきて、英語科の教員免許を取るために、教職課程も取っています。

Q2. 高校時代のSSHの取り組みからどのような学びがありましたか?

田口:1年次の「探究入門~問いを立てる~」(現「課題研究入門」)が印象に残っています。詩人でもある大学の先生のお話を聞けた時は、こんなふうに言葉を紡いでいくのか!と感動しました。

高校生の時点ではまだ自分が何に興味を持てるかわからない人が多いと思います。そんな中で、大学の先生や専門家の方から、文理を分けずに色々なお話を聞いて、面白さを届けていただけたのはすごく貴重でいい経験になりました。一見別の分野に見える学問同士でも関連している部分があるということに気づき、色々な分野に目を向ける姿勢がついたのはこのカリキュラムのおかげかなと思います。

白武: 私も「探究入門~問いを立てる~」(現「課題研究入門」)が思い出深いです。文系から理系に興味を持ち始めた時に、お年寄りの方の転倒を防ぐためのサポート装具を開発している医療工学の太田先生のお話を聞きました。工学というと、機械改造とかロボットをイメージしていたのですが、人間の生活にとても身近で直接貢献できるものだと気づきました。工学の面白さに目覚めてから理系に対する視野が一気に広がったのを覚えています。今も、お茶大で太田先生の授業を履修していて、ご縁を感じています。

Q3. 高校での課題研究の取り組みについて教えてください。

白武:生き物好きな友人が熱心に研究していたのをみて、自分もやってみたいと思い、共同研究でカメのバイオロギングをしました。バイオロギングとは、生き物にカメラや試験装置をつけて、生き物の生態を調べることです。カメの甲羅に、加速度を図る装置をつけてみると、夜と昼で活動量や、泳ぐ位置が違うということがわかりました。バイオロギングの装置から出力された波形の読み方がわからなかった時は、本を探して調べてみるだけでなく、専門で研究している東京大学の先生にメールを出したこともあります。未知で全くわからない課題に出会っても、放り出さず、自力で解決する方法を考えて探すことができる能力は、ここで身に付きましたし今でも活かせていると思います。

田口: 私は日本文学に興味があって、平安時代の文学、「更級日記」の内容から作者の出家の理由を分析する研究をしていました。

古文の先生にご指導いただいて、先行研究を読み込んだり、参考文献をしっかり整理したりした経験は、どの分野でも活かせる研究の基礎になっています。高校の時から研究成果を発表する経験を積んでいるからこそ大学生になってもあまり困ることがないです。

また、今、英米文学の研究をするうえで、文献をたくさん読み込み、文学の歴史に触れてきた経験が強みになっています。

Q4. 高校生活を振り返って印象的な思い出はありますか。

白武:大自然科学部での活動ですね。伊豆大島で自然観察をする合宿も行いました。残念ながら高校2年生からはコロナ禍で、思うように活動ができませんでしたが、それでもやれることで楽しめるメンバーに恵まれたなと感じています。炎色反応を利用した花火を自作してみようと、化学室を借りて、配合を試行錯誤しながら綺麗な線香花火を作ったのもいい思い出です!

やってみようと話が上がったら、全力で取り組んで実現させてしまう強さはお茶高生らしさだと思います。

田口:私は1年の諏訪合宿のことを思い出していました。諏訪湖の水質調査を滞在中に毎日やって、夜には班のメンバーで電卓を叩きながら記録をしました。みんなでワイワイ楽しい合宿でありながら、しっかり勉強にも真面目に取り組む、お茶高らしいイベントだったなと思います。

部活は、中国武術部に入っていました。中国武術を部活として取り組んでいるのは全国でお茶高だけなので、運動は苦手だけど挑戦してみたいと思ったのが入部のきっかけです。ほとんど未経験者の部員ばかりでしたが、コーチに教えていただきながらわきあいあいと楽しく活動しました。競技人口が少ないこともあって、大会に出て結果を残せた部員や、今も続けている部員もいます。

お茶高では、他の高校ではなかなかできない特別で面白い体験をたくさんさせてもらえたなって、振り返って感じますね。

Q5. 後輩へのメッセージをお寄せください。

白武:自分の「好きなこと」を、「得意なこと」よりも重視して、選択をしてほしいなと思っています。私自身は、今は理系の道を進んでいますが、高校時代は全然理系の科目はできませんでした。英語が得意だったので、英語を究めていく、文系の道を当初は目指していたんです。でも、「探究入門~問いを立てる~」(現「課題研究入門」)や課題研究を通じて、理系分野の面白さに気づいて、こっちの道に進みたいなと思うようになりました。1年間浪人をして苦手だった理系科目の克服をし、希望した勉強ができる学部に入れた今、とても幸せです。

苦手だから諦めるのではなくて、とりあえずやってみる、ということをしてみてほしいです。お茶高はそのための環境が整っているので、好きだな、面白いなと思うことを高校生活で見つけて諦めずに頑張ってください。

田口:私も、今は少し興味の方向は変わったけれど、高校の時に興味を持っていたことがベースになっています。お茶高は、やりたいことを突き詰められる場なので毎日を大切に過ごしてほしいなと思います。また、お茶高生は、それぞれが違う分野で好きなものを見つけてきて、何を好きって言っても認めて「いいね!」と言ってくれる人が多いです。きっとこれからも励まし合って尊重しあえる仲間になると思うのでぜひ大切にしてほしいです。

インタビュー・文責 番留千尋(卒業生)

2021年度卒業(2024年4月インタビュー)
東京農工大学 農学部地域生態システム学科3年 山賀梨菜さん
一橋大学 経済学部経済学科3年 衣川朋位さん

Q1. 大学ではどのような活動をされていますか?

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衣川:一橋大学の経済学部経済学科で、資源経済学とまちづくりを学んでいます。医療や環境など自分の身近な生活にあるものは経済のシステムに組み込まれているのを知り、どんどん勉強が楽しくなってきたところです。経済学以外にも、大学で受けられる授業はたくさんあるので、少しでも気になるものはとにかく学んでみるようにしています。

2年生で引退したのですが、政策立案コンテストを主催する「GEIL」という学生団体に所属し、社会問題について考えながら議論していました。労働問題や教育格差など、自分が知らなかった社会問題に触れる機会になり、一つの目標に向かってみんなで意見を交わして形にしていくという経験も楽しかったです。将来は、民間企業でしっかり働きながら自分の生計を立てた上で、ボランティアなどの社会貢献をしていきたいと言うビジョンをもっています。

山賀:1・2年生は、農学部環境資源科学科に所属していましたが、3年生からは地域生態システム学科に転科することになりました。もともと、ジブリが大好きで、そこで描かれる豊かな自然に憧れがあったのと、自分が都会で育ってきたからこそ、自然にすごく惹かれるものがあり、漠然と自然保全活動に関わることができればいいなと思っていました。勉強を進めるうちに、自分のやりたいことがより見えてきて、人間の営みにもっとフォーカスして環境問題に迫りたいと思ったのが転科の理由です。院進し、将来的には物質的にも精神的にもサステナブルに環境問題の解決に取り組めるといいなと思っています。

Q2. 高校時代のSSHの取り組みや学習からどのような影響を受けましたか?

衣川:1年生の「探究入門~問いを立てる~」(現「課題研究入門」)という、様々な分野のエキスパートの先生方が講演してくださる授業が印象に残っています。「生命現象とエントロピー増大の法則」といった専門性の高いお話も聞けたし、広い意味で科学として捉えた分野のお話も聞くことができて、いろいろなことに興味を持つ機会になりました。初めは、サイエンスは自分には遠いものだと思っていたけれど、意外にも科学的に捉えて展開できる事象ってたくさんあることに気づきました。いい意味でハードルが下がり、文理に縛られず勉強してみたいと思えるようになりました。

SSH指定校でありながら、先生方から、いわゆる理系テーマで研究することを強要されることなく、自分たちのやりたいことを科学と結びつけながら自由に研究することを応援してもらえた環境は、本当に有難かったですね。

山賀:SSHの活動を通して、知らないうちに文系理系に満遍なく触れて、自分が面白いと思えるポイントを見つけられることって大きいことだなと思います。今私がいる農学部は、理系の中でも一番文系に近いという感覚があります。というのも、農業は人々の生活があってこそで、そこにアプローチするには自然科学的な研究結果やデータを持ってくるだけでは解決せず、人に寄り添ったり対話したりするということが必須なんです。文系も理系もいろいろな観点でつながっていてどちらも必要だということに、高校生の頃から気づけていたからこそ、自分の学びたいことのために転科するということも実行できたんじゃないかなと思っています。

Q3. 高校での課題研究の取り組みについて教えてください。

衣川:災害時に役立つ防災ポーチの開発について研究していました。1年生の時に福島フィールドワークに参加し、震災の被害を間近に感じて、首都直下型地震等に備えて自分たちにも何かできることはないかと考えたのがきっかけです。市販の防災ポーチを調べたり、アンケート調査をしたり、グループでディスカッションを重ね、オリジナル商品の開発を目標に研究していました。大学生協と協力して商品化の話まではいったのですが、実現には至りませんでした。附属の連携を生かし大学の先生にアドバイスを伺う機会があり、ポスター発表やディスカッションに向けて、どうすれば自分の伝えたいことがちゃんと伝わるかを考えて実践したことは、今に繋がっていると思っています。たとえば、学生団体で社会人の方と議論し仕事をしている時にも、「コミュニケーションの基礎ができている」とお褒めいただきました。これもSSHでの探究活動あってこそのものだったと思っています。高度なレベルを求められ、それを当たり前だと思ってこなしていた高校時代の経験ってすごいことだったんだなと最近思うんです。

山賀:私たちの高校生活は新型コロナウイルスに大きく影響されたということもあり、色々な制約が人々の心理状態にどのような影響があるのかを知りたくて、グループで研究しました。デリケートな課題であり、アンケート調査もできないので進め方が難しいテーマでした。先行研究は多く、研究構想をあれこれ考え、議論している途中で時間切れになってしまったのですが、一現象の中にある、人の感情に注目して研究したいという考え方は、大学で学ぶ今でも共通しているのかなと思っていて、それに気づけたことは大事な一歩になっています。

 衣川さんも言っていたように、コミュニケーションの基礎を形成することや研究の構想を立てることなどが、今に活かせていると思います

Q4. 高校生活を振り返って気づいたことについて教えてください。

山賀:私が好きな「耳をすませば」のセリフの中で、「自分の信じる通り、やってごらん。でもな、人と違う生き方は、それなりにしんどいぞ。誰のせいにもできないからね」という言葉があります。お茶高生活の中では、自分で責任を持てるお茶高生だからこそ、信じてやらせてもらえることが多かったなって多います。もちろん大変なこともあったけど、自分の行動や言葉に責任を持ってやり遂げるのはしんどいだけじゃなくて楽しいことで、それができる自分に気づいて、やってみようと思える3年間でした。また、外部から得るさまざまな情報に対してなんでも素直に受け止めるのではなく、自分の頭で考えるようになったと思います。

衣川:確かにそうですね。勉強面では、学校主導でバリバリ受験勉強をする進学校を勝手にイメージしていたのですが、入学してみると文理を両方学ぶカリキュラムなので、みんな自分でスケジュールを立てて主体的に受験勉強を進めていくんです。その分高校では、受験勉強だけでは得られない、貴重な経験をたくさんさせてもらって自分の視野が広げられた気がします。生徒一人ひとりに、時間とリソースを割いて進路を助けてくれた先生方の存在もありがたかったですね。

Q5. 後輩へのメッセージをお寄せください。

衣川:今は、自分の受験科目以外も勉強して、大変だなと思っている人もいるかもしれませんが、絶対にどこかで役に立つ知識や経験になって、「ここで活きてくるんだ!」と自分の答え合わせができるはずです。お茶高で学んだこと全部が意味のあることだと思って、学び続けてほしいなと思います。それから外に出て、お茶高生はいい意味で特殊だったなと思います。パワフルでなんでも面白がれる、そんな個性をずっと大事に持ち続けてほしいなと思います。

山賀:高校に入りたての時は、みんなに迷惑をかけないようにしたいと様子を見ながら過ごしていました。でも高校生活を過ごしていくうちに、たとえ迷惑をかけても自分でリカバリーして今度は周りを助ければいいんだと思えるようになりました。お茶高生には、コンクールや発表の機会をたくさん提供してもらえる環境を生かして、どんどん外に飛び出して挑戦してみてほしいです。お茶高は、みんながそれぞれに頑張っていることがあって挑戦しているからこそ、うまくいかなくても受け止めて応援してくれる人ばかりだと思います。失敗を恐れず自分のやりたいことに正直でいてほしいです。

インタビュー・文責 番留千尋(卒業生)

2021年度卒業(2024年4月インタビュー)
筑波大学 生命環境学群地球学類3年 沓沢葉子さん
東京大学 理学部化学科3年 米川真由さん

Q.今、大学ではどんな活動をしていますか?
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沓沢:筑波大学生命環境学群の地球科学類に所属しています。「地球科学」とは「地理」と「地学」がミックスされたような分野のイメージで、地球の成り立ちや気象現象についてなどを研究する学問です。1.2年生のころは、「地理」が含む文化的要素に注目し、地形と産業についてフィールドワークから学ぶなどしてきましたが、今はどちらかというと、地学に近い研究、なかでもプレートの動きと地殻変動の関係を探る「プレートテクトニクス」に興味があります。将来的には、院に進み、自分の研究を続けていければいいなと思っています。
米川:今年の春から、東京大学理学部化学科に進学することになりました。小さい頃から、どのようにして世界や社会が成り立っているのかというような、世の中の根本的なことを考えるのに興味があったんです。そこで、世の中の万物を物質的に捉え直してみる「化学」をもっと学んで、この答えのない問いを明らかにするために研究を続けていければいいなと思っています。

Q.高校での課題研究ではどのようなことに取り組みましたか?

沓沢:私は、「100%立つ茶柱を作る」というテーマで研究しました。茶柱はお茶の葉の茎でできているもの。100%立たせるためには、茎を加工して重心を変えることで実現するんじゃないかという仮説を立てました。そこで茎の半分に水を染み込ませたり、重りをつけてみたりと試行錯誤を繰り返し、1000本以上の茎を試験用に使いました。その後、お茶の粉を固めて重りにしている茶葉がすでに商品化していることを知り、その企業に取材をして、研究のヒントをいただいたところで研究は終わってしまいました。ですが、高校生の自分が仮説を立て、実験を重ねてデータを集めることができたという実践の経験が、とても自信になりました。
米川:私は、「双子素数は本当に永遠に続くのか」ということを、プログラミングを用い、グラフに起こして検証しました。数学の授業で、先生が、双子素数について少し触れて話していたのが印象に残っていたのがきっかけです。「無限って面白そう」と感じ、友人を誘って一緒に研究をしました。プログラミングについては独学で始めたので、データが重すぎて動かなくなってしまうなど不測の事態も起こり、とても苦労した思い出があります。情報の先生や数学の先生には、スキル的にサポートしていただきましたし、高2の範囲を超えた学習内容にも関わらず、根気よく教えてくださったことも、ありがたかったです。
最終的にはコンテストに出場して、ポスター発表を行う経験を積むこともできました。どうやって人に伝えるかというアウトプットの仕方も身につけられ、今に活きていると思います。

Q.お茶高のSSHの取り組みや学習内容についてどう感じますか?

沓沢:今でこそ理系の道を歩んでますが、元々は文系科目の方が得意で、将来は文系に進むかなと思っていました。高1では、地理や地学が必修で、先生にも恵まれて、「すごく面白い科目だ」と感じました。もっとこういった勉強をしてみたいと思ったことが原点になって今の専攻があります。ダイナミックな自然に囲まれるのが昔から好きだった一面があり惹かれた部分もありますが、初めから文理が分かれて、教科の面白さに触れることができなかったら、自分のやりたいことを見つけるのに遠回りをしていたと思います。
米川:私も、今の進路を決心できたのも、切っては切り離せないところが必ずある文理を同時に学んだからです。「社会はどうやってできているのか」そんな途方もない問いに、どうアプローチして解明していくかを考えたときに、哲学的な視点、それから化学的な視点……。文理関係なく、今まで学んできたたくさんの視点から捉えることができるのは私の武器になると思っています。

それから、自分のなかで、数学の難易度に限界を感じてしまい、辛かったからこそ、SSHの研究では思いっきり数学を究めて行けるところまで行って楽しもうと思っていました。それが実現したことによって心残りはなく、化学を究める方向へシフトできたんです。

Q.お茶高での高校生活を振り返って気づいたことはありますか?
沓沢:私にとってカルタ同好会での活動が青春だったなと思います。中学の頃に「ちはやふる」という漫画にハマって、高校では絶対やろうと決めてから念願だったので、すごく熱中して週3の練習に取り組んでいましたね。受験生になっても朝練したり、合格発表を待っている時でさえもみんなで集まったりしていました。お茶高生って、みんな何かに向かって努力していて、一緒に頑張ってくれるような温かさが共通しているからこそ、久々に会うとほっとするんです。
米川:お茶高生ならではの「空気感」、よくわかります。話を否定せずに聞いてくれて何事も面白いって思ってくれるからこそ、心を開いてコミュニケーションできる。日常的に、そのようなお茶高生の優しさに触れてきたからこそ、自分を作り上げることができた、ありがたい環境だったなと思うんです。

Q.後輩へメッセージをお寄せください。
沓沢:研究面で言うと、SSHの研究ではペアやグループの仲間との共有をしっかり行い、モチベーションを保つことがコツです!あとは、自分の研究を見て評価してもらえるコンテストにもっと出してみればよかったと思っています。先生も仲間も応援し支えてくれる環境にあるからこそ、迷ったらぜひたくさん挑戦してください。
米川:お茶高での学びや出会いって当たり前じゃなかったし、寂しいけれどもう二度と得られない経験だったんだということを今更ながら実感します。課題研究にも、やり切ったと言えるぐらいに全力で取り組んで、「今」を楽しんでください!

インタビュー・文責:番留千尋(卒業生)

2022年度卒業(2023年9月インタビュー)
東京工業大学 物質理工学院1年 田中里奈さん
埼玉大学 工学部環境社会デザイン学科1年 谷塚由実子さん
筑波大学 生命環境学群生物学類1年 國﨑沙和子さん
お茶の水女子大学 理学部生物学科1年 和田幸佳さん

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Q 2020年入学生は、本校が2019年にSSHに指定され、それが周知されて入学してきた初めての学年ですね。学校を選ぶに当たり、SSHであることを意識していましたか。

和田:実は私はSSHだということを知らずに入って来ました。中学1年で学校説明会に来て、その時はスーパーグローバルハイスクール(SGH)だったのでSGHが続いているものと思っていました(笑)。とはいえ、SGHもそれほど意識していなくて、むしろ「360の輝く個性」というキャッチフレーズに一目ぼれして、お茶高に決めました。

谷塚:私もSGHだと思っていました(笑)。英語が話せるようになったらいいなぐらいの乗りで。実際お茶高に入ってみたら、周囲の英語力がすごく高くて驚きました。

國﨑:実際、お茶高生は英語、強いですよね。私はSSHとわかって入りましたが、それが決め手ではありませんでした。中2で学校説明会に来て、その時はSGHの説明を聞きました。SGH、SSHということよりも、お茶高の雰囲気や校舎、「360の輝く個性」、「自主自律の精神」、「知の継承と創造」というのに強く魅かれ、受験の前は、何度もホームぺージを開けて、そのキャッチフレーズを読み返していました。

Q 皆さんの学年は、コロナ禍の影響で入学式がなくなり、その後の休校、6月にやっと分散登校が始まった学年で、大変なこともたくさんあったと思います。SSHのカリキュラムはいかがでしたか。

田中: 1年生の「課題研究基礎」で一通り手法を学び、プチ課題研究もやったことで、その後の課題研究をイメージすることができ、とても役立ったと感じています。

谷塚:私は1年生の「生活の科学」(家庭科)が課題研究につながりました。授業で扱った草木染を応用して、「オレンジの皮で爪を染める」ことをテーマに研究しました。オレンジの皮は、1年中入手可能で、皮を使えばフードロスにもならないし、余り物で爪を染められたらいいなと思ったのが研究のきっかけです。

國﨑:私も家庭科の授業で学んだことが課題研究のヒントになりました。捨てられてしまう物の価値を高めるアップサイクルという考え方を応用して、アルミ缶から宝石を作れたらと考え、「実験室でアルミニウムから宝石を作る」を課題研究のテーマにしました。実際にはアルミホイルを使ったのですが、先行研究をいろいろ調べて、電気炉を使った方法を試行錯誤しました。最終的には得体の知れない、ちょっとピンクっぽいところがある塊ができたのですが、それが宝石と言えるのかはわかりませんでした(笑)。

和田:私は音楽と科学を結び付け、数値で音楽の力を証明したいと考えていました。最初は「植物状態の人を音楽で回復させる」というテーマで課題研究を始めたのですが、医学の知識がなく、人で実験するわけにもいかないので、行き詰ってしまいました。ただ、今になって思うと、どうすればいいのだろうと、考え続ける癖がついたのが、大きな財産になったと思います。結局、11月になって、「人を洗脳できる音楽のテンポ」にテーマ変更しましたが、明確な結論は出ないまま、時間切れとなってしまいました。でも、音楽と数学がつながっていることが実感できたことや、課題研究の担当の先生とあれこれ議論を繰り返したことが、今に生きています。

田中:私は、「ヒトの生まれつきの色素はどのように決定されるのか」というテーマで課題研究をしました。先行研究を調べて、実験・考察を繰り返すことで、研究というものをどのようにしていくのか、イメージできるようになりました。どういう研究を大学でやりたいかという視点は、進路を選択するうえでも役立ったと思っています。宇宙系にも興味があったのですが、それより化学系、理論化学よりも応用化学という風に、自分のやりたい分野を、課題研究で得た研究のイメージを元に絞っていきました。

谷塚:課題研究によって、レポートにまとめ、分析し、考察するといったことやICTスキルは相当鍛えられたと思います。受験勉強と両立するのは大変な面もありましたが、大学に入って役立つことは間違いありません。分からないことをすぐに調べる習慣もつきました。

Q 後輩たちへ伝えたいことなどを自由にお話しください。

和田:高校生の時は、大学の先生は遠い存在かもしれませんが、意外に応えてくださるというのが実感です。お茶大キャリアガイダンスのときなどに、勇気を出して質問してみるのがオススメです。一歩勇気を出して相談してみると、たくさんお話してくださいます。

國﨑:同感です。同じ敷地内に大学があるのは、課題研究をするうえで、いい環境だと改めて思います。私は、課題研究でお茶大の設備を使わせてもらったり、研究に行き詰った時にはお茶大の化学の先生のアドバイスをいただいたりもしました。勇気を出して質問してみると、大学の先生はそのような高校生を歓迎してくださいます。

田中:課題研究については、大学でもやりたいことを高校でやってみるのもいいですが、今興味のあることをやって、高校だけのテーマになってもいいと思います。私は、高校2年の終わりまで文理も決めていなかったので、前から気になっていたことを解消したいという興味だけで進みました。

國﨑:それは本当にオススメです。私は理系に進むという考えしかなく、練習という意味でも純粋な理系のテーマを研究しましたが、今思うと、高校時代にもっと寄り道してもよかったかなと思うこともあります。

谷塚:自分の好きなことを、何でもいいから、高校時代に突き詰めていけるといいですよね。この分野でないとダメだと思うと苦しくなるけれども、好きなことなら苦しくても何とかなるし、挑戦すればいいと思います。

國﨑:私も、挑戦する勇気が大事だと思います。挑戦してやってみれば何とかなることが多いし、何とかなれば自信になります。何とかならなければ、いい経験になったと思えばいいので、強制するわけではないですが、後輩たちには、「やってみれば」と伝えたいです。

2021年度卒業 (2023年9月インタビュー)
東京大学 理科I類(工学部計数工学科進学予定)2年 木村眞子さん 
東京慈恵会医科大学 医学部医学科1年 岡田蘭子さん 
二松學舎大学 文学部中国文学科書道専攻1年 福島光砂さん

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Q 2019年入学生は、入学してから、お茶高がSSHであることを知った学年ですね。SSHの取組はいかがでしたか。

木村:まず入学して、1年生の「探究入門~問いを立てる」が面白かったです。大学の様々な分野の先生の話を聞き、自分の進路について興味のある分野を見つけるきっかけになりました。

岡田:いろんな分野の先生の話を聞くことで、私もすごく視野が広がりました。1年生の時は、自分が何をやりたいか、まだ決まっていなかったのですが、学問は文系理系といった分け隔てがあるものではなく、様々な分野が繋がっているということがわかるようになったことが大きな収穫でした。

福島:文理は分かれているものではなく、学問分野同士が意外なところで繋がっているということは、大きな発見でした。最新分野の研究やマニアックな研究に触れ、そこまでの道のりを自分で探していくということに気づかされたことも、刺激になりました。

 課題研究ではどんなことに取り組みましたか。

福島:私は「幾何学模様」をテーマに設定しました。ひと口に文様といっても奥が深く、芸術的なことを、数学、民俗学、宗教などに落とし込める、学問が交差しているという気づきが面白かったです。特に、芸術に対して、科学や数学で切り込むという視点に魅かれて、今はそういうテーマ:「文化財の保存科学」を探究するため、大学院に進学できればと考えています。課題研究のおかげで、分からないものを自分で調べることが当たり前になって、もやもやを放っておかない癖がついたと思います。最近、研究論文を読んでいて、大正時代の人と同じ研究分野に行きついたときは非常に感動しました。

木村:私は、「くさやの臭いは消せるのか」というテーマで探究しました。結局、思うような結論は出なかったのですが、自分たちで計画して、実験して、考察を考え、それを繰り返すという手順を学びました。それは、受験勉強も同じで、私は塾に行っていなかったこともあり、自分で計画を立てて進めないといけなかったのですが、それがまさに探究活動と同じという感じでした。今後何をやっても、どの分野でも、自分で探究することは必要だと思いますが、どのように考えを進めていけばよいかを高校の課題研究を通して体得できたのは、大きな成果だったと思っています。

岡田:私は、「ゲシュタルト心理学」をテーマにしました。とにかく、論文を読み漁り、未だにわかっていないことが多い分野だということがわかったという感じです。大学に入って心理学の授業を取り、高校の課題研究で自分がやっていたことが大学レベルだったことがわかりました。当時は物理がまだ学習途上だったけれど、今大学に入ってこの分野をやると、もやもやしていたことが、どんどん繋がっていって感動しました。今思うと、お茶高の課題研究は、みんながそれぞれ自分の好きな専門領域を高校生なりに大学レベルでやっていたのだと実感します。

Q お茶高での学びを振り返りつつ、後輩たちへ伝えたいことなどを自由にお話しください。

岡田:私自身を振り返ると、3年生で体育祭団長をやるなど、高校生でしかできないことを楽しんだことがよかったと思っています。結果浪人になっても、高校でやり残したことはないという心持ちで勉強に集中できました。後輩たちには、自分が今できることを考えて、精一杯楽しんでほしいです。色々なことに興味を持って挑戦している友人に囲まれて過ごした3年間はとても恵まれていたと感じています。

木村:高3まで文理に分かれず、幅広く学べる環境がすごくよかったです。大学に入学する際には一旦選ばなければなりませんが、入学後にほかの分野に進みたくなったとしても、基礎を一通り学んでいるので、他の分野に進む心理的ハードルは低いように感じますし、専門の研究をするなかで、他の分野の知識が必要になることがあっても、研究を進めやすいと思います。私は、計数工学の分野に進むのですが、まずは基礎をしっかり身に着けて、大学院ではそれを応用できたらと考えています。

福島:私は結果的に文系に進みましたが、理系の基礎教養を高校で身に付けたおかげで、大学に入ってから、周囲とは違う角度で学問ができる実感があります。お茶高は、能力の高い人がたくさんいて、色々なことに興味をもって、挑戦したり、探究したりしている。時に彼女たちの専門性の高さがコンプレックスになることがあっても、得難く素晴らしい環境だったと今では感じます。大学に入って留学生と交流する機会に恵まれるようになったのですが、理系の留学生でも古典や芸術の基礎教養があると喜んでくれます。外国語で源氏物語や理学の話をしたりしていると、「日本人は皆こんなに何でも知っているの?」と言われるのですが、それは私がお茶高で学んだおかげです。基礎基本・教養教育を一貫して貫いている母校が本当に誇らしいです。

2021年度卒業(2023年6月インタビュー)
東京大学 文科二類(経済学部進学予定)2年 田附紗夕さん

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Q お茶高の学びを振り返って、どう感じていますか?

A お茶高の授業では、先生方の豊かな知識に圧倒されながら、楽しくかつ実践的に学ぶことができました。教養主義でいろいろな科目を学べたのがとてもよかったです。授業で得た知識が興味の種となり、新たな発見にワクワクする毎日でした。また、双方向の授業の中でついた、自分の意見をもち考えをまとめる習慣は、今でも活されてかされていると思います。いつも刺激をくれる友達に囲まれたお茶高での学びは、自分の可能性をどこまでも広げてくれ、私にとってかけがえのない3年間でした。

Q 2019年入学生は、入学してから、SSHであることを知った学年ですね。SSHはどうでしたか。

A SSHを通して、立てた仮説が実証され成功するよりも、結果が思うようなものではなかったときに、何が問題かを見つけ出し論理的にその打開案を考えていくことこそが、大切なプロセスであると身に沁みて感じました。先生と相談しながら、自分にできる方法で探究活動を進めることができ、難しいだろうと思っていた研究に対する壁も払拭されました。

 また、大学の先生や企業の方による特別講義では、研究に対する姿勢、そして困難を乗り越える力について伺い、未知の世界に触れることができました。

Q 課題研究のテーマは何でしたか?

A お弁当の中のお米がパサパサになりやすいことに着目し、時間が経ってもおいしい「ご飯の炊き方」をテーマに、ご飯の水分を保持する効果や手軽に実践できる方法を研究しました。2年生3月の校内成果発表会で領域代表として発表したほか、東京都内SSH指定校合同成果発表会や関東近県SSH指定校合同発表会など、校外へも積極的に挑戦したことで、わかりやすく伝えるプレゼン能力を養うことができました。

Q 大学で取組んでいる活動・研究について教えてください。

A 現在教養課程で幅広く学んでいるところです。私はもともと文理問わず総合的に学ぶことが好きなので、さまざまな分野に触れることができて楽しいです。

 例えば、昨年度は『ブランドデザインスタジオ26 新しい「幸せ」のブランド(創造編)』という博報堂との産学連携授業が、特に面白かったです。「幸せ」は東大の推薦入試の際の志望理由書で言及している、私にとって大変関心のあるテーマであり、さらにブランドプロデュースやブランドデザインにも興味があったため、履修しました。コンテストに向けてチームで協力しながら、情報収集・調査・分析、課題発見・コンセプト作成、アイデア具体化・発表を進めつつ、社員の方から思考方法やアイデアの広げ方についてのアドバイスを直接いただくこともでき、貴重な経験でした。夜遅くまでオンラインミーティングを行い、ときにはぶつかりながらも、チーム全員が納得できる形で挑むことができ、大きな達成感を味わいました。
 サークル活動では、“UT-BASE”という「東大生の挑戦・熱中・学びの機会を最大化する」ことを掲げる団体に所属しています。情報発信のみならず、イベント開催・ゼミ運営などを幅広く行う学内メディアです。広報・デザイン・ユーザー分析などを担当して自分の興味を深めながら、優秀なメンバーと活動することは刺激や成長につながっています。

Q 最後に、お茶高生へのメッセージをお願いします。

A 少しでも気になったことにはどんどん挑戦する「前向きな行動力」を大切にしてほしいです。その一歩が、大きなきっかけになるかもしれないし、何かの発見につながるかもしれません。たとえそれが自分に合っていなかったとしても、これは違ったなと気づくことができます。私は、やった失敗よりもやらなかったときの後悔の方が心残りになると、自分に言い聞かせていました。今しかできないことは今やろうという意気込みで、どんどん挑戦してください。

 また、私がやってみてよかったのは、見たこと聞いたことに対し、一度自分なりに噛み砕いて解釈するステップを踏むことです。新たな発見に出会え、そのふとした気づきが、未来の自分の考えや行動に活きてくるように思います。習慣づけると、日々の学びの量が増えて楽しいので、勉強に限らず何事にも活かしてほしいです。
                                  

2019年度卒業(2021年インタビュー)
東京工業大学 工学院経営工学系2年 成玲娜さん

卒業生

質問 高校時代の探究活動ではどのようなことを行いましたか?

回答 未来の防災・減災に関係した探究活動を行いました。東日本大震災を取り上げて、地震、津波、原発事故の避難生活に関しての調査からはじめ、実際に福島へフィールドワークへ行き、インタビューや、今の高校生の防災への意識を知るために、東京と現地高校生へのアンケートなどを行いました。実際に感じたことや学んだことをWebサイトにまとめました。
「ふくしまから考える未来」http://shirou-fukushima.jp 
第21回全国中学高校Webコンテスト金賞

質問 そのテーマで探究したきっかけは何ですか。

回答 学校で実施の、「福島フィールドワーク」に、高校1年生の時に参加したことが大きいです。高校1年生のSGH学校設定科目「グローバル地理」で防災について学び、関心は持っていたところに、学校で福島訪問の企画があり、さらに興味・関心が高まりました。2年生の時には、探究活動の一貫として、福島を再訪しました。現地では、様々な場所を見学するだけではなく、東京電力の方や、住民の方など、東日本大震災に対して異なる立場の方からお話を伺いました。それぞれの方が、復興なのか、もっと現状を進化させていきたいのかなど、「軸」に考えていることが違い、行政の状況など、現地でお聞きして初めてわかることも多く、多様な視点を得ることができました。

質問 探究活動で学んだことは何ですか?

回答  ただ調べるだけではダメで、自分の目や耳で確認すること、行動して知ることが大切だということを感じました。実際のフィールドワークを通じて、自分が想定していなかった視点を得ることが出来ました。外部の方への電話やメールでのアポイントメントを自分で行うことも良い経験となりました。

質問 探究活動では、グループリーダーにもなりましたね。

回答  はい、リーダシップとは何か、ということも学んだことです。探究活動のグループリーダーになり、チームを動かす大変さを経験しながらリーダー像が変わりました。リーダーは、指示したり引っ張るのが大切だと思っていましたが、フォロワーの性格や得意なことを把握して、自分も楽しく、どうやって働きかけるかが重要です。リーダーとしてもできないことはできないとはっきり言い、メンバーの進捗が遅い場合は、相手のためにも、自分のためにもそれをきちんと伝えていくようになりました。

質問  進路選択と高校での学びはどう関わりましたか。

回答  実は、中学までは、ずっと心理学に興味があって、文系に進学すると思っていました。でも、高校の授業が、理系進学のきっかけになりました。
例えば、お茶高は、高大連携で、大学と連携した授業も多かったですよね。大学の先生と高校の先生で連携して教えていただいた、「教養数学」の時間には、虹を数学で考えることを通して、数学により関心を持つようになりました。高校の化学の授業で、特別講師のお茶大の女性の先生から学んだことが、理系に興味を持ったきっかけにもなっています。
心理学への興味も続いています。お茶高は、お茶大の授業を履修できるシステムがあり、私「心理学」を受講しました。人間工学など、今大学で取り組んでいることにも心理学に関係しているものがあります。大学では、どんどん関心や興味の対象が広がっている感じです。

質問  大学での活動を教えてください。

回答  連携入試を活用して進学した東京工業大学で、経済学や数理工学など、専門の基礎となる学問を学んでいます。
高校で福島フィールドワークに参加したことで、「何か自分にできることはないか?力になりたい!」という気持ちになり、現在は、福島で学生インターンとして、地域活性化のために役に立ちたい学生と企業とのコーディネーターとして活動しています。インターンでは、高校で学んだリーダーシップについて身につけたことが、とても役立っています。チームビルディングにも、インターン生としても、リーダーシップ、フォロワーシップの両方のマインドが本当に必要です。究極には、「人とどう関わるか」ということですね。

質問  卒業して高校での学びをふりかえって気づいたことはありますか。

回答  卒業してみると、改めて教養教育を軸に学べたことに、ありがたさを感じます。
「SDGs・エシカル」や「ジェンダー」などの基礎知識を学べたことで、社会に対する関心だったり、社会に課題意識を持ち、自分で問いをたて、課題解決をすることを高校生のうちにできたことが、とてもいい経験でした。
プレゼンテーションなどを用意するときにも、高校での経験が生きています。私は東工大のアーツサイエンスの部分にもとても惹かれおり、大学ではどんどん興味や関心が広がっています。

質問  最後に、中学生や高校生へメッセージをお願いします。

回答  やりたいことはやりましょう!自分の幅や視野を広げる機会です。動くことで得られる知見や、出会った人が見えない財産になると思います。
それから、「井の中の蛙」にならないように.自分がいる場所は世界のほんの一部です。それを知るためにも行動しましょう!
 

2019年度卒業
東京大学 教養学部国際環境学コース進学予定2年 上田萌加さん

 
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質問 高校時代の探究活動ではどのようなことを行いましたか?

回答  熱中症について探究しました。気候条件との相関を分析したり、熱中症を防ぐための情報発信をしたり、熱中症から環境問題へと目を向ける取り組みをしたりしながら、地球環境への興味を深めました。

質問  そのテーマで探究したきっかけは何ですか。

回答  環境問題について、身近な題材で「何か社会に働きかけてみたい」と考えていました。同様の思いをもつメンバーで集まり、「探究活動がどこに行き着くかわからないワクワク感」を持って取り組みを始めました。学校生活の中で、熱中症リスクの指数であるWBGTの影響を感じたことが、熱中症を切り口として取り上げるきっかけになりました。

私はお茶大附属中学校在籍中、水や環境についての自主研究を行っていました。そのころに参加した附属高校の成果発表会で、「経済発展と環境」講座の高校生がグループで協働して探究活動に取り組み、成果を外部に発信して社会貢献につなげていこうとする様子を見て、自分もやってみたい!と思いました。

質問  探究活動で学んだことは何ですか?

回答  協働の楽しさと難しさを常に感じました。役割分担する際に、行うべきことの量と締切を適切に設定することにはとても悩みました。また、アイデアが果てしなく広がる一方、収束点をどこに持っていくかなど考えを整理することに苦労し、先生方にフィードバックを求めに行くことの大切さに気付きました。

グループの集大成として位置付けていたWebコンテストでは、目指していた結果を残せず悔しかったです。だからこそ、明確な改善点やさらなる探究への高いモチベーションが得られ、ゴールも気づけばスタートとなっていました。

次第に評価されることにこだわるよりもいかに共感してもらうかが大切だと気づき、伝え方や魅せ方を考えるようになりました。

さらに、社会へ発信することはネットワークを広げる効果があることもわかりました。この探究活動で出会った団体や専門家の方々に私たちが作ったWebサイト「熱中症予防声かけプロジェクト」を紹介していただき、さらに多くの人たちへ発信することができました。

質問  探究活動以外には、どんなことに取り組みましたか。

回答  学習環境を世界に広げることで新たな学びを得たいという思いから、高校で募集があった国際的な研修に積極的に応募しました。

高1の春には台湾で開催された「APFST(Asia-Pacific Forum for Science)」というプログラムに参加し、アジアを中心とする15カ国の中高生と「科学の未来を創造する」をテーマに議論をしました。この時は、将来、人類は地球に住んでいないのではないかという大胆な仮説を立て、では現代の農業をどうしたらいいか考える、バックキャスティングという帰納的な思考が面白くて印象的でした。一方で、各国の代表生徒に圧倒されっぱなしの自分にもどかしさを感じました。英語力が足りなかったのはもちろん、自分の意見を持つことの大切さや、リーダーシップをどうやって発揮するかを考える機会になりました。

高2の夏には「アジアユースリーダーズ2018」に参加し、「インドネシアの食生活の改善策を考える」というテーマでアジア6カ国の高校生たちと議論をしました。ここでは、APFSTの経験や高校の探究活動で培った力を総動員し、1年前よりもインプット・アウトプットのどちらもスキルアップできました。仲間と協力して下調べをし、ディスカッションでは自分の体験も交えて意見を提案したほか、プレゼンテーションのスライド作成も担当しました。高校生のうちにこれらの経験ができたことで、これまでもっていた漠然とした国際的な活動への憧れが、具体的なイメージを持った目標に変わりました。

質問  高校での学びで印象的なことは何ですか。

回答  内容にとどまらない教科横断的な授業が印象に残っています。例えば地理で酸性雨について調べるときは、紫陽花を使って実験しました。また、倫理の授業では映画鑑賞をしながら正義や資本主義経済について学び、学習のヒントはどこにでもあることに感動しました。多様で深い学びのアプローチがあることを知り、学びの限界を作らない教育スタイルは、私にとても合っていました。お茶高ならではの学習環境の中で、学問そのものに対する興味も高まったように思います。

質問  大学では何を学んでいますか。

回答  現在は、エネルギー工学といった環境技術について学んでいます。高校時代に未来からの逆算的な思考を獲得したことで、環境技術に対し自分には何ができるかという点に興味があります。

高校のときから環境問題にかかわるコーディネーターのような仕事がしたいという夢を持っています。今はその夢に向かうと同時に興味の幅を広げています。現在は、藻類を環境保全に生かす研究のお手伝いをしています。私は、この研究を実用化し発展させるには経済や社会との親和性をも考える必要があると思います。実用化のためには交渉力など総合的な人間力も必要になってくるでしょう。ですから、高い専門性と同時に人や物事をつなぐことができる人間力を身に着けることも今の目標の一つです。

質問  卒業して高校での学びをふりかえって気づいたことはありますか。

回答  自分が取り組んだことに意味づけをして高校を卒業できたことが良い経験となり、自分の「軸」になっています。一見バラバラで違うことに取り組んでいるように見えても、それぞれを互いに取り入れて生かしながら自分の「軸」に統合している感覚があります。高校の時と同様に、未だに自分の興味が絞られているわけではないですが、最近は自分なりにスレッドを立てて考えを定期的に文章化するなど、機会があるごとに学びを振り返り整理しています。悩んだ時には「軸」を持って考えようとしているところは高校での学びを活かせているように感じます。

また、一人だけで考えるのではなく、サポートしてくれるような友人あるいは先生方にアドバイスを求め、頼れるところは頼ってサポートを十二分に活用できたことは有効だったと感じます。自分の行動の意味づけを大切にした経験から、とりあえず「参加した・認定された」というレベルで満足するのではなく、「なぜ・何のために」を常に問い、本質と向き合いながら進む道を考えていく必要があると気付きました。

質問  最後に、中学生や高校生へメッセージをお願いします!

回答  みなさんに意識して欲しいのは、小さくとも自分から行動する、ということです。行動すると失敗することもありますが、どうして失敗したのかよく考え次につなげることができれば、それは失敗ではなく成功への一歩になります。今は様々な情報があふれていますが、ほしい情報は待っているのではなく自分から収集しにいくことも大切です。そうして行動している中での「偶然の出会い」が次の可能性を広げてくれると私は信じています。

 
メディア掲載

本校生徒・教員による研究活動や教育活動、研究成果などが様々なメディアで取り上げられました。

本校の卒業生が、進学先の大学のメディアで紹介されています。

 
表彰

2023年度の表彰・受賞

2022年度の表彰・受賞

2021年度の表彰・受賞

2020年度の表彰・受賞

2019年度の表彰・受賞